異動が決まったら必ずやるべき業務の引き継ぎ完全ガイド

こんにちは、職場プレス編集長の石川です。

サラリーマンに異動はつきものですよね。

内示から異動までの期間が短く、ただでさえ忙しいのに業務の引き継ぎまで追加されてさらに慌ただしくなります。

この記事では、引き継ぎの必要性を明らかにした上で、具体的な業務の引き継ぎ方法をお伝えします。

また、まともな引き継ぎが受けられない場合は、この記事の「これだけはちゃんと教えてもらいたい」という部分を抜き出して、前任者にお願いをしてみましょう。

今すぐ具体的な引き継ぎ方法を知りたい方は「2.具体的な引き継ぎの手順」からお読みください。

1.なぜ引き継ぎが必要なのか

異動・転職・退職が決まると必ず引き継ぎが必要となり、資料を作ったり、関係先に挨拶周りをします。

ふとした瞬間に「なんで俺がこんなことやらなきゃいけないんだ。俺はちゃんとした引き継ぎも受けずにここまで出来るようになったんだから後任も苦労すべきだ」という気持ちが出てきます。

しかし、こんな考え方のままで業務を引き継ごうとすると必ず、抜け漏れが発生し、結局は自分にシワ寄せがきます。

ここでは、前向きな気持ちで引き継ぎができる考え方をお伝えします。

1−1.担当者としての義務を果たそう

現在、あなたが担当している業務は、会社から給料を受け取る対価として果たすべき義務です。

会社で業務を行う場合、配属された時には前任からの引き継ぎや上司・先輩からの教育があり、職場に増員があると教育を行い、職場を離れる際には後任への引き継ぎが必要になります。

頻度は多くなくとも、その一連の流れは通常業務として必ず発生します。

そのため、引き継ぎに対して「なぜ俺がこんなことをやらなくちゃいけないんだ」と思っても意味がなく、それどころか嫌々やることで引き継ぎ業務がうまく出来なくなります。

引き継ぎに対して「これは会社の通常業務であり、義務なんだ」と思えば「どうやったらスムーズに引き継げるか」と考えるようになるため、結果としてあなたと後任者の双方にとって良い引き継ぎになります。

1−2.異動後に問い合わせされないように!

   

とはいえ、義務だと割り切っても、実際に引き継ぎのことを考えると面倒くさいと感じてしまいます。

しかし、引き継ぎをしっかりやらないと後になってさらに面倒くさいことになります。

いい加減な引き継ぎをすると、自分が異動した後に必ず後任者から問い合わせがきます。

「何の目的でやるのか」「具体的には何をやればいいのか」「データが保存されている場所はどこか」「どうやって資料を作ればいいのか」などを事あるごとに問い合わせされて、異動後の業務に集中できなくなります。

さらに新しい職場の同僚からは「引き継ぎもちゃんと出来ない奴」というレッテルを貼られてしまいます。

そのため、異動後に新しい環境でしっかりとスタートすることを目標に面倒でも今の仕事をしっかりと引き継ぐようにしましょう。

会社のためではなく、後任者のためでもなく、まさに将来の自分のために引き継ぎを行えばいいのです。

2.具体的な引き継ぎの手順

いざ業務を引き継ごうと思っても慣れていないと何をどうすればいいのか、そもそも何が必要なのかが分からないことがあります。

引き継ぎは「確認」「作成」がキーワードです。

ここでは、引き継ぎに必要なこととその手順をお伝えします。

2−1.確認すること

引き継ぎにおいて確認すべきなのは、スケジュール、後任者、上司の承認の3つです。

それぞれの内容をお伝えしていきます。

2−1−1.異動までの引き継ぎスケジュール

まず、異動・転職・退職が決定した時点で、職場を離れるまでの引き継ぎスケジュールを確認しましょう。

①後任者に会える回数と期間

②取引先への挨拶のスケジュール

特に上記の2点は、相手が関係するため必ず確認をしましょう。

そこから逆算をして、作成が必要な書類の質を考えます。

2−1−2.引き継ぎをする後任者と伝えるべき要点

次に後任者がどのような属性の人間か確認し、伝えるべき要点を決めましょう。

①同じ職場の同僚

同じ職場の同僚であれば、あなた自身が担当している業務内容や環境が普段から共有されています。

直接的ではないにしろ、業務の雰囲気が伝わっていて、会社の文化や職場独自のルールもお互いに分かっているということが引き継ぎにおいて最大の強みとなります。

そのため、伝えるべき要点は「業務の項目と具体的な手順」のみでOKです。

引き継ぎの難易度は最も低いです。

★☆☆

②他部署から異動してくる人

次に他部署から異動してくる人です。こちらは会社の理念や文化について共有ができますが、あなたの職場独自のルールや人間関係、業務の雰囲気は分かりません。

そのため、伝えるべき要点は①の「業務の項目と具体的な手順」「職場独自のルール」が加わります。

難易度は中くらいです。

★★☆

③新規採用者

あなたの代わりに採用された人は、そもそも会社の理念・文化や雰囲気が分かりません。

伝えるべき要点は②と同様に「業務の項目と具体的な手順」に「職場独自のルール」ですが、簡単でもいいので「会社の文化や雰囲気」を伝えることも忘れないようにしましょう。

右も左も分からない新規採用者の不安をできるだけ取り除くことで、引き継ぎがスムーズに進みます。

難易度は最も高いので、心して引き継ぎにあたりましょう。

★★★

2−1−3.引き継ぎ方法の上司の承認

スケジュールと後任者を確認でき、伝えるべき要点が決まったら、上司の承認を得ましょう。

あなたが担当している業務に対して継続して責任を負うのは上司になります。

そのため、報告した内容に修正が入るようであれば、上司が考えた方法を採用しましょう。

自分がやり易い方法でないと抵抗を感じますが、上司が承認した方法であれば、引き継ぎについてあなたが責任を問われる可能性は低くなります。

逆に上司の意に反する引き継ぎをしてトラブルが発生した場合、「お前がちゃんと言われた通りにしなかったからだ!」と言われてしまいます。

目的や内容をよくすり合わせて、上司が納得するものを引き継ぐように心掛けましょう。

2−2.作成するもの

さて、スケジュール・後任者の確認ができ、上司の承認が得られたら次はいよいよ資料作成を行います。

ここが引き継ぎにおいて最も重要なポイントとなります。

2−2−1.業務の棚卸し表

まずはあなたが担当している業務の棚卸し表を作成しましょう。

項目は業務の名称だけでOKです。

この棚卸し表は最初に全体を把握するために作成します。

例えば、営業職であれば以下のような書き方です。

・営業ルートの作成
・新規見込み客の開拓
・既存顧客への訪問
・日報や月次資料の作成
・営業会議への出席

この時点では紙に書いてもWord・Excelに入力してもOKです。とにかく漏れがないように書き出しましょう。

2−2−2.棚卸し表に基づく業務手順書

次に棚卸し表を元にして業務ごとに業務手順書を作ります。

業務手順書の項目と具体例は以下の通りです。

項目   具体例
棚卸し表の業務名 what  既存顧客への訪問
目的 why  売り上げの維持
いつやるか  when  週1回以上
相手先  who  海山商事 事業部 アナゴさん

業務の手順

(参照資料含む)

 how

①アナゴさんにアポイント

②商材パンフレットを持参して訪問

③購入済みの商品のフォローアップ

④今後の展開についてヒアリング

 気をつけること  risk  アナゴさんは売り込みが嫌い。商品提案は紹介程度が良い。以前、海山商事との取引時にトラブルがあった。

 

この業務手順書は、引き継ぎ後に後任者が業務をやる上での判断基準と行動指針となるので、できる限り丁寧なものを作りましょう。後任者がさらにその後任にそのまま渡せる水準だとかなり良いものと言えます。

なお、業務手順書は、後任者が更新できるようにWord・Excelなどの業務で使用する標準的なPCソフトで作成しましょう。

2−3.残務処理

業務の棚卸し表を作成すると処理すべき残務があることに気がつきます。

残務への対応は以下の2点です。

①自分で処理をする

後任者は業務に慣れることで精一杯になるため、全体感が把握しづらい残務を引き継がれると負荷が大幅に増えてしまいます。

引き継ぎをするあなた自身の努力でなんとかなる業務は可能な限り、自分で処理をしましょう。

②後任者に引き継ぐ

とはいえ、関係先がある、重要な事項のためにすぐに決定ができない、そもそもスケジュール的に無理、など処理しきれないものも出てきます。

その時には、後任者が最大限やりやすい環境を整えて引き継ぎをしましょう。

具体的には、「2−2−2.棚卸し表に基づく業務手順書」での「気をつけること(risk)」に業務のゴールと現在の進捗状況を追加して、今後のやるべきことと注意事項を思いつく限り明記してください。

取引先の担当者がキーマン、◯◯の資料作成に2日くらい必要、棚上げされてそのままになる可能性がある、などなど。

ここまで出来たら、引き継ぎの8割は完了したも同然です。

2−4.名刺の整理

次に名刺の整理に取り掛かりましょう。

名刺は基本的に引き継ぎをするか、廃棄をします。

異動の場合は、異動後もやりとりをする必要がある方の連絡先を控えるに留めましょう。

必要がないけれども「いつか使うかも?」と思った名刺は捨てましょう。

引き継がれた後任者はいるかいらないか判断できないものを持つことになりますし、異動先にあなた自身が持って行くとすぐにデスクがパンパンになります。

転職・退職の場合は、必要か否かを整理した上で後任者に渡し、不要なものはすべて廃棄しましょう。

業務で受け取った名刺は全て会社の資産であり、あなた個人のものではありません。

名刺を捨てる時にはシュレッダーにかける等、個人情報が漏洩しないように注意してください。

2−5.関係先への挨拶

異動・転職・退職を外部に公表できるようになったら、後任者と一緒に関係先に挨拶をしましょう。

関係先は職場によって違いますが、「会社の利益」を判断軸にして優先順位を決めると良いです。

最重要なのはお客様ですね。

挨拶の際には、これまでのお礼、後任者がどういう人間か(ポジティブな内容)、「引き継ぎをしっかりと行っているから安心して大丈夫」ということを伝えましょう。

関係先は、これまでのやりとりがスムーズに継続できるかが気になるので、その点について問題が無いことを明確に示す必要があります。

2−6.引き継ぎをする上での前提

さて、ここまでの流れを実行すれば、引き継ぎはスムーズに出来ます。

この章の締めくくりとして引き継ぎにおける前提をお伝えします。

2−6−1.引き継ぐ業務について、後任者よりもあなたの方が圧倒的に理解している

引き継ぎをしていると後任者の理解が遅く、イライラすることが多々あります。

しかし、後任者の理解が遅いのではなく、あなたの業務知識や判断能力が高いのです。ですから、優れている者の務めとして、相手が分かるまで感情的にならず、丁寧に伝えていきましょう。

2−6−2.後任者には「目的」と「やり方」を明確に示す

後任者はこれから担当する業務がどんなものか分かっていません。そのため、目的を伝えることで業務の必要性が腑に落ちて、やり方が明確になることで迷うことが少なくなります。

2−6−3.後任者があなたのクオリティを再現できることを心掛ける

どんな業務にも必ず勘どころ(コツ)があります。勘どころは業務マニュアルや資料に書いてあることが少なく、すでに業務を経験した人だけが持っていることが多いです。

そのため、引き継ぎ資料では勘どころを注意点として書き加えると伝わりやすくなります。

引き継ぎを通じて、あなたの経験(暗黙知)を資料(形式知)に代えて後任者に伝えることができれば、あなたがその業務を担当してきた意味が大きくなります。

勘どころは業務によって異なりますが、例を挙げると関係先のキーマンとその人と接する時の注意点、業務をやる上でやりそうなミス、資料作成に役立つExcelのスキルなどがあります。

3.引き継ぎの先にあるもの

さて、ここまでお読みいただければ、引き継ぎの意味と手順は把握できたと思います。

ここでは、実際に引き継ぎで見えてくる課題と新たな環境で気をつけることをお伝えします。

3−1.業務の見える化と改善のための気づき

引き継ぎ資料を作成すると今まで主観的に行ってきた業務を俯瞰的に捉えることができます。

業務の目的、やり方、注意点などがはっきりと見えてきます。

すると「あれ、ここ効率が悪いじゃん」「この業務とこの業務がかぶってるよ」「そもそもこれ、いらない」など課題も見えてきます。

そこで、引き継ぎで忙しい中ではありますが、業務改善のチャンスを活かして最後に評価を上げて去りましょう。

具体的には、後任者への引き継ぎの際に「今やっている業務はAだけど、Bという方法に改善できる可能性がある」と伝え、そのことを上司にも報告しましょう。

引き継ぎ時にこれまでのやり方を変えることは負荷が大きく、またミスも起きやすいため現実的ではありませんが、後任者が慣れたタイミングであなたの言葉を思い出せば、業務改善を実行する可能性が高くなります。

大きく変えることを目指すのではなく、小さくても確実に改善できる種をまくつもりで伝える、くらいの気持ちがあれば十分です。

3−2.次の職場で気をつけること

実際に引き継ぎをしてみると想像していた以上に大変な作業だと思います。

次の職場に行った時に同じ大変さを味わわないために日々の業務の中で注意をしましょう。

具体的には、日次・週次・月次などのルーティン業務の流れを文書化しましょう。

最適なタイミングは、その業務を行った直後です。

「あれ、これって来月もやる業務だよな」と感じたら、その流れや参照する資料や確認する事項を書き出します。

そうすることで次に作業をする時に参照すればいちいち考えずに手を動かすことができ、やがて訪れる引き継ぎの際にも役に立ちます。

きれいに文書化する必要はありません。自分が見て分かる最低限のことを紙に書いたり、Wordにベタ打ちしておくだけでも大丈夫です。

4.まとめ

ただでさえ忙しいのに異動があると引き継ぎをやったり、受けたりと慌ただしくなります。そして、段々とイライラしてきて「もうやってらんねぇ!」となると思います。

しかし、順序立てて取り組めば、何とかできるものです。

また、しっかりと引き継ぎをやることで、あなた自身の業務スキルがアップして、さらに次の職場では効率的に業務を行うことを考えることができるようになります。

「どうせ後任者が何とかするだろう」と意地悪に考えず、会社にとっても後任者にとってもあなたにとっても次に活かせるような引き継ぎを実践してみてください。

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